8/10のと里山農業塾№9 エンドファイト

8/10のと里山農業塾では播種実習が予定されていたが、猛暑のため来月に延期、その代わりに「エンドファイト(エンド=内側、ファイト=植物で、植物の中に共生する微生物の総称)」の講義が組み込まれた。自然栽培は「無肥料・無農薬」栽培だが、それでも作物が育つのは微生物が肥料分や耐病抵抗性を供給しているためで、そのメカニズムが少しずつ分かってきた。『サイエンスゼロ:つながる生物の謎 土の中の小宇宙』(YouTube)を見ながら学んだ。2010年4月の放送だが、僕は初めて見たので新鮮だった。以下、抜粋する。(上の写真は根粒菌。)

森林の土1gの中には個体数で50億ものバクテリアが存在する。(廣さん曰く「生きもの全体では1兆を超えるが、3%くらいしか解明されていない」。)

成澤才彦さん:土の中の微生物については全く分かっていない。それは99%以上が培養できないから。微生物が何を食べているか分からないことに加えて、微生物は一人で生きているわけではなくつながりをもって、つまり共生して生きているため。培養して研究する手法自体に限界がある。

エンドファイト:植物の内側を住処としている生物で、その多くは微生物。例えば、ダイズの根に生息する「根粒菌」。マメ科の植物から養分をもらい、窒素を供給している。

秋山康紀さん: 陸上植物の8割に共生するといわれる“アーバスキュラー”という「菌根菌」もエンドファイトの一種で、土の中のP(リン)を植物に供給し、植物からはC(糖分)をもらう。通常、植物は異物が入ってくることを拒絶するが、この菌は受け入れる。むしろ植物はシグナル物質を出して菌に場所を教える。また菌からもシグナルを出しており、それを感受した植物は共生の準備に入ることが分かってきた。その上同時に、地上部に分けつを促す物質も出している。

金子信博さんの「眠り姫仮説」:地中のバクテリアは普段眠っているが、王子様が目覚めさせるという仮説。王子様とはヤスデやミミズで、土と一緒にバクテリアを食べると、王子様の腸の中でバクテリアが増殖し、糞とともに土の中に排出され栄養豊富な土になる。

単体研究からつながり(相互関係)研究へ:カビ(好気性)の中にバクテリア(嫌気性)が共生していると、嫌気性の中でも生きていける。逆に抗生物質バクテリアは死滅するがカビはOKなので、抗生物質があっても、バクテリアは守られる。

成澤才彦さんはエンドファイトを農業に生かす方法を研究している:例えばアスパラガスは病気にかかりやすいが、カナダで採取したエンドファイトがあると、病気に強く、枝ぶりも根も精悍になることが分かった。

エンドファイトが直接病原菌に作用して病気をやっつけるということはしない。エンドファイトは病原菌が入ってきたら植物に知らせ、植物は元々持っている耐性反応をする。つまり、エンドファイトは植物の防御反応を誘導する、スイッチオンする。このように、微生物と植物は互いにコミュニケーションをとりながら共同して暮らしている。

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廣さんの補足:眠り姫仮設にあるように、エンドファイト(菌)は眠っているだけで居るので、起すことが重要。それには「根粒菌」と「乾かすこと」が不可欠。乾かすことで好気性菌を活性化させ、チッソを入れなくても植物は育つ。水を入れる場合でも、水を動かす(酸素を入れる)ことで好気性菌を活性化すること。因みに、リンとカリは全て土壌中にある。

なお、EM(有用微生物群)などの微生物を直接投入する方法について廣さんに伺ったところ、「ずっとEMを投入し続けなければならない点が今一、かつ高価。その気になれば簡単に自分で培養できる。」とのことで、僕の直感と同様だったので、EM投入はなしとし、上記自然栽培の方針を追求することにする。