9/13岡本よりたか無肥料栽培セミナー№7

秋冬野菜の間引きや土寄せの仕方、苗づくりやコンパニオンプランツ、ミネラルバランスの重要性など、多岐にわたる奥の深いセミナーだったので、後で繰り返し復習できるようできるだけ詳しくまとめた。まだまだ未知の世界が広がっている。

1⃣ 研修畑にて

ダイコンの間引き:間引きは絶対に必要

  • 本葉が1枚以上出たら早めに(本葉4枚以上出たら遅い)、3本を1本へ間引く
  • 自然界では1本に淘汰される仕組みが備わっているが、栽培では働かないので人為的に間引かなければならない
  • 主根は残して引き抜くと、別のところに植え替えることができるが、側根が切れてしまいあまり大きくならない。根菜類は植え替えが弱いので、基本的には直播きが良い
  • ダイコンはねじれて大きくなるので、間引かないと互いに巻き付いてしまい失敗する
  • ねじれて大きくなるのは太陽光を求めてという説があるが、ダイコンは十字型に葉っぱが出るのでねじれる必要がない。元々ねじれて根が張る性質があるのではないか?

大豆の葉かき

  • 葉かきは極めて重要で不可欠。1回目は栄養成長から生殖成長に転換するときに、実の成長を促す目的で行う。元々大豆はつる性の植物なので、自家採種を続けると原点回帰してつるボケしがち。ゆえに、つる性の葉っぱを手で引っ張って引き抜き(ハサミで切るのが基本)、成長点に日の光を当てる。青い色の豆も光合成しているので光を当てる。大規模農家では手で引き抜く代わりに、刈り払い機やバルカンで葉かきする
  • 葉かき2回目は、収穫2~3週間前頃、葉っぱが黄色く落ち始め自然に登熟する頃
  • 葉かき虫は見つけたら取る。豆ハンミョウも同様
  • 大豆は茎を太くすると実が付かなくなる

★大豆とトマトの混植:大豆と菌根菌の間では窒素と糖のやり取りはあるが、外のトマトとの間にはない。だから混植したからといってトマトが良く育つことはない。但し、大豆でも枝豆で食べる場合やつる性のインゲン(青い状態で収穫する)は、溜め込んでいた窒素が要らなくなり放出するので、トマトは良く育つ。北海道での実験では、大豆で収穫する場合は土壌の窒素は増えない(むしろ減る)が、枝豆で収穫する場合は2倍に増える。 ☆大豆は水分を良く吸うので、この点で乾燥を好むトマトには良いという側面がある。

大豆の土寄せ

  • 株間30cm、1列に蒔き土寄せする。『大豆は土寄せで育てる』というくらい、必ず土寄せはやる
  • 土寄せのタイミングは、本葉5~10枚、高さ4~50cmの頃。花が付いたらしない。
  • 土寄せの意味は、①根を切って新しい根を出させる→新たに成長する ②栄養を与える ③倒れないようにする。一番下の枝が出ているところまで土寄せする

ナスの更新剪定

  • 8月上旬、実を十分収穫し「生り疲れ」した後、やる。地温が25℃以上になると実が育たない。生り疲れした枝を切り落とし、その下の脇芽を育てる。皮は硬いが味の良いいいナスができる
  • ナスは元々インドの多年草で木に近い

コンパニオンプランツ

  • 草でも良い
  • 株元にネギを植えるのは、ネギの根から出る根酸が消毒作用を持ち病気を防ぐので良い(根酸に集まるバクテリアが菌を防御する)。寄り添うように植える(恋人植えという)

キャベツの土寄せと混植

  • 雑草堆肥で、茎の色が少し違うとことまで土寄せする。雑草堆肥がない場合は「銀の土」で代用しても良い(「銀の土」はバーク堆肥が入っているので炭素分が多い)。または腐葉土+畑の土でも良いが、米ぬかが入っていないのでリンPがない
  • アブラナ科はカルシウムを必要とするので灰を与える。草木灰を根に当たらないよう株から離して円形状にまき、土をかぶせる。灰が根に当たると弱ってしまう。雨など水に溶けると水酸化カリシウムになり安全になる。人為的にカルシウムやマグネシウムを与えるにはイオン化合物(硫酸や硝酸と化合させる)にしないといけないが、硫酸や硝酸がバクテリアをおかしくするので問題になる。自然物で与えると上記のように安全
  • コンパニオンプランツとして、小松菜とシュンギクを両端に蒔く。小松菜はバラ筋蒔きで土は浅くかける(虫はこちらを先に食う)。シュンギクはたくさんの種を厚く播く。しっかり上から押さえ、種と土を密着させる

キャベツ:契約栽培の場合

  • 土づくりがメインで、追肥的なことはしない。
  • 土づくりは、まずは野焼きしてすき込む。最初はイネ科の草を野焼き、次に1年草やマメ科の草が生えてくるので刈り取って米ぬかを混ぜ、チッソが抜けてきたらすき込む。冬の間に緑肥を作っておいて、刈り取ってすき込む
  • 6月頃までおき、6月末~7月に苗を作付けし、11月に出荷する

タマネギの苗づくり:培土

  • 培土は、畑の土(粘土質を好む)に、①赤玉土、②バーミキュライト、③ピートモス、④籾殻燻炭を加える。①~④は土に対して10%ずつ均等に入れる
  • 赤玉土を入れると空気層ができ、②バーミキュライト(ひる石)はマイナス電子が1個多いのでプラスのミネラルを吸着する(保肥力という)、③ピートモス水苔が枯れて堆積したもの)は水持ちが良くなるが酸性なので、④アルカリ性の籾殻燻炭を入れ中和させる。
  • タマネギ(ニンニクも)に必要なのはリンとホウ素。雑草堆肥や米ぬか堆肥を加えると良い
  • 嫌気性なので種は深く播く(筋蒔き)。プランターの場合水は毎日やる、畑の場合は乾いたら水やりする
  • 苗は20cmないと失敗する。冬を越せない

油かすの自作、福島ではセシウムの除染に使う

  • のらぼう菜は交雑しないので作りやすい。5万円くらいで絞り機があるので、自分で油を搾る
  • 福島ではセシウムの除染にアブラナ科を使っている。セシウム(ミネラル)は油かすに吸収して、油には入らないので絞った油は活用する

よりたか氏は、油かすと米ヌカと草と土を混ぜて、6ヶ月くらいかけて堆肥を作っているとのこと。

2⃣ 座学

リレー栽培

キャベツプラン

  • コンパニオンプランツ:小松菜、シュンギクの他は、レタス(キャベツの日陰に作る)、ホウレンソウ(カルシウムが必要なので草木灰をまく)
  • キャベツには2種類の葉っぱがある:①外側に倒れる薄緑色の、ろう成分の少ない葉っぱは、青虫に食われる用、②立ち上がる色の濃い、ろう成分の多い葉っぱは虫から守る(食われていたら虫を取り除く)
  • 倒れないようリンや窒素成分の多い雑草堆肥で土寄せする
  • 11月に霜が降りると葉っぱが腐ってくるので、黒の寒冷紗をかける
  • 今の時期(9月上旬)には本葉10~15枚出ていないとダメ。これ以降出てくる葉っぱが結球する
  • 葉っぱをつくるには窒素が必要、そのためにはカルシウム(草木灰)が必要
  • 元々キャベツは結球しない。人間が無理やり結球させている。薹立ちすると周りから出てくるがあまりいい種にならない。結球を十字型に切って真っ直ぐ上に出してやり種を採る

ミネラルの拮抗(阻害:⇔印)と促進(→印) ※複雑だが簡単化すると以下

要は、ミネラルはバランスが大事!

  • 自然栽培では、米ぬか(リン、窒素)+灰(カルシウム)でバランスを取る
  • 慣行栽培では、化成肥料(窒素、リン酸、カリ)+苦土石灰(カルシウム、マグネシウム)でバランスを整える

米ぬかは、乾かして発酵させてから使う。乳酸菌が出て、カビが生えても大丈夫。虫もタンパク質になるのでOK。しかし、米ぬかを直接土に入れると、水があるので醗酵してカビが生えるのでダメ。

炭素循環農法

  • C比が高い枯れたものを入れると、Cを分解するバクテリアが増え、窒素を集めてくる(たんぱく質を分解する)ので、CもNも多くなる。この間半年~最長1年かかる
  • 問題はバクテリアのバランスが崩れることと、Cを入れなくなるとリューニンやセルロースが増え土がガチガチになること。但し最近は改良されているらしい?

バクチャー(微生物活性材)

  • イオンの力で水の汚れやトイレの臭いを消してくれる。浄水器と同じ原理で、EM菌でも良い。しかし、アルミニウムと銅が残るので、土に入れると土が死んでいく

ブロッコリープラン

カブプラン

  • 3粒播きすると大中小のものができ、順番に収穫できる(固定種の場合)。2粒播きすると同じ大きさになる
  • 3粒の内2粒をカブ、1粒を小松菜の種にすると、競い合って早く育つ
  • 混植は小松菜の他にニンジン。ニンジンは根が浅いものとの混植でないとダメで合うものがものが少ない。カブの周りにまく

タマネギ、ニンニク

  • リンが必要。リンがあっても鉄とくっついて使えないので、根酸で溶かして利用できるようにする。周りにアブラナ科の野菜をまいておくと、溶かしてくれる。またはクエン酸を水に希釈してやると(水13Lにクエン酸一つまみ、酢でも良い)、鉄を離してくれる
  • 米ぬか堆肥を使う

ニンニクは植える深さが大事

  • ニンニクを9月にまく場合、1カ月前に米ぬか堆肥と灰を混ぜ込ませておく
  • 植える深さがポイントで、種は縦向きに植え、種の上から7~10cm、下から15cmのときが、最も大きくなる
  • 株間は15cm。このとき根が微妙に触れ合うかどうかの距離になり、葉っぱが触れあうかどうかの距離でもある。菌根菌同士がコンタクトを取れる位置で、虫に食われるとエンドファイト(バクテリア)がファイトケミカル(生物毒)を生成して出す ※この位置関係はニンニク以外でも共通

秋ジャガイモ

  • 堆肥は入れない方が良い。但し、土づくりは必要で、1カ月前に堆肥を施しておく
  • 土をほぐして植えるのが大事。空気を入れて好気性菌を増やしたいので。嫌気性菌が増えるとそうか病(放線菌)を発生させる。そうか病が出ると簡単には消えないので、別の場所に行かないとダメ

サツマイモの後作

  • アレロパシーを出すので、後作に何を持って来てもうまく行かない。翌春まで休ませる
  • 生えた草はアレロパシーをくぐり抜けてきたものなので、刈り取ってすき込むことでリセットする

里芋、ショウガ

  • サトイモやショウガ、ミョウガは、水を好み、木の下など日陰でよく育つ。やショウガ、ミョウガは、水を好み、木の下など日陰でよく育つ
  • 葉っぱを大きくして、光合成の仕方も他と異なる
  • 里芋の茎は食えない。シュウ酸(毒)が多いので
  • ショウガは芽出しが勝負。なかなか芽が出ないので、芽出した玉ショウガを買ってくる方が簡単で間違いない

生野菜

  • 生野菜に体が反応する場合は、酵素と線虫が考えられる。酵素の場合は火を通して壊す、線虫は目で見えないので厄介だがよく洗うこと。線虫が残っていても通常は胃酸で分解するが、たまに胃酸を通り抜けて腸まで入り込むと病気に原因になることがある。牛糞や鶏糞を使った有機栽培は特に注意が必要

ソラマメ、大豆

  • ソラマメは10月まいても良い。マメ科は空気中の窒素を固定するので、土をほぐして空気を入れることが大事
  • ソラマメはお歯黒から芽が出るので、ここを下にして植える。または面倒なら横にして植えればよい
  • 大豆は小麦の間に植えても良いが、小麦の条間を50~60cmと広くとらないと(その分収量は落ちるが)、大豆の土寄せができない。大豆は双葉のとき鳥に食われるので不織布を掛ける。本葉になると食われないので不織布は取る

PHの測り方

  • PHは水素イオン濃度を測るので、土の深さ20cmのところ(根が張るところ)まで水をたっぷり入れて、土をよく混ぜ溶かし込んでから測る。土の表面で測るなどのいい加減な測り方では意味がない